施工管理の人手不足が深刻化する理由と5つの対策・展望を解説
公開日:2025.01/26
施工管理とは、建設工事の現場で建築物や構造物を計画通り、安全で効率的に完成させるために必要な管理業務全般のことです。
しかし近年、少子高齢化や労働条件の厳しさの影響などで人手不足が深刻化しており、施工管理の未来を守るための対策が求められています。
本記事では、施工管理の人手不足の現状・原因・解決策について解説します。
施工管理の人手不足の具体的な解決策を今すぐ知りたい方は、下記をクリックしてご覧ください。
>>>施工管理の人手不足を解決するための5つの対策<<<
施工管理の人手不足の現状
施工管理における人手不足は、近年深刻化しています。
施工管理は主に、品質・工程・原価・安全の4つの側面で管理を行い、現場全体の調整を担います。
しかし下記のグラフに示されるように、建設業全体で職業別就業者数は減少傾向です。特に、技能者や技術者の就業者数が平成9年(685万人)をピークに減少し、令和4年には約479万人と大幅に減少しています。
つまり、技術者の高齢化が進み若年層の育成が追いついていない状態といえます。
施工管理の人手不足が深刻化している7つの理由
ここでは、施工管理の人手不足が深刻化している主な理由を7つ挙げます。
なお施工管理の人手不足の対策は、次章の「施工管理の人手不足を解決するための5つの対策」で紹介していますので、安心して読み進めてください。
理由1.労働人口の減少と少子高齢化の進行
日本全体で進行している少子高齢化は、建設業界においても顕著に影響を及ぼしています。
前述したように、建設現場で必要とされる技術やノウハウを持つ熟練労働者の高齢化が進み、若い労働者が減少していることが深刻な問題です。
下記のグラフは日本の人口推移を示しています。「生産年齢人口」といわれる現役世代(15〜64歳人口)の減少が加速しており、2020年時点で約7,593万人だった生産年齢人口は、2060年には約5,141万人まで減少すると予測されています。
出典:新しい時代の働き方に関する研究会 報告書 参考資料|厚生労働省
一方で、高齢化率(65歳以上の人口割合)は38.4%に達し、少子高齢化がますます進行する見込みです。
理由2.建設業への入職者数の減少と離職率の高さ
厚生労働省の雇用動向調査によると、建設業への入職者数は、平成16年度の387万人にくらべ令和1年度では252万人と35%減少しているのが現状です。
また下記のグラフからは、建設業の新卒入職者の3年目までの離職率は、製造業に比べ高卒で17%、大卒者で10%程度も高いことがわかります。
入職者数の減少と、育成した人材も定着しにくいという課題を抱えているといえます。
理由3.労働条件の厳しさ
施工管理の業務には、下記のような厳しい労働条件が多いのが特徴です。
- 工期の厳守や不測のトラブル対応による長時間労働
- 現場での作業指導や、多様な関係者との調整業務による精神的肉体的な負担
- 労働時間や業務の厳しさに対して、他の職種と比較して給与水準が十分でない場合がある
労働条件の厳しさが、若年層を中心に施工管理の人手不足を加速させている要因の一つと考えられます。
理由4.技術の進化への適応の遅れ
建設業界では、DX(デジタルトランスフォーメーション)やICT(情報通信技術)の導入が遅れている現場も少なくありません。
ドローンや建設管理ソフト、DXを推進するツールなどの技術は進歩しているものの、熟練労働者が新技術に適応するには時間がかかるケースが多い傾向があります。
デジタルツールを活用すれば業務負担を軽減できる可能性があるにもかかわらず、「初期コストへの課題」や「昔ながらの慣習が根強い」など、デジタル化の恩恵を十分に活用できていないのが現状です。
建設業界でDXが遅れている原因と対策をさらに深く知りたい方は、下記の記事もチェックしてみてください。
建設DXが進まない原因とは?現場ファーストで成功に導く4つのステップを解説
理由5.教育・育成不足
建設業界では若手技術者の教育や人材育成の体制が十分に整っていない場合があり、施工管理の人手不足を引き起こす要因の一つとなっています。
現場では即戦力が求められる一方で、「経験を積む機会・体系的な教育プログラムの不足」や「ベテラン技術者の現場で培われたノウハウの継承が進んでいないケース」が見受けられるのも現状です。
下記の記事では、建設業での若者離れの原因や対策をまとめているので併せてチェックしてみてください。
理由6. 性別を問わず働きやすい環境づくりの遅れ
性別を問わず多様な人材が働ける環境整備が遅れている点も、施工管理の人材不足の理由の一つです。
女性労働者の参入も課題で、物理的な労働環境やトイレなどの設備が整っていないことが、女性の働きやすさを妨げています。
下記は、就業者中に占める女性の比率です。赤線が建設業で、どの産業よりも大幅に女性比率が少ないことが見て取れます。
出典:4. 建設労働 | 建設業の現状 | 日本建設業連合会
子育てや家庭の事情に配慮した柔軟な勤務体系の遅れが、多様な人材の確保が難しくなっている理由として考えられます。
理由7.建設需要の急増
建設業界全体の需要が急増していることも、施工管理の人手不足に拍車をかけています。
下記のグラフは、2002年からの建設投資の動向です。建設投資は1992年度の84兆円をピークに減少傾向が続き、2010年度にはピーク時の50%程度まで減少しています。その後、東日本大震災の復興需要や民間設備投資の回復により、建設投資は増加傾向です。
出典:1. 建設投資の動向 | 建設市場の現状 | 日本建設業連合会
2024年度の建設投資は、前年度比2.7%増の73兆200億円に達する見通しです。
- 政府投資: 前年度比3.7%増の26兆2,100億円
- 民間投資: 前年度比2.2%増の46兆8,100億円
下記のような要因が、需要の急増を引き起こしていると予想されます。
- 老朽化したインフラの改修
- 都市再開発プロジェクト
- 防災・減災を目的とした公共プロジェクト
どれも規模が大きく、施工管理者の経験やスキルが求められるケースが増えている一方で、こうした需要増に対して供給が追いつかず、施工管理者の不足が業界全体で深刻化しているのが現状です。
施工管理の人手不足を解決するための5つの対策
本章では、施工管理における人手不足の解決策として、国や公的機関の取り組みを参考にした5つの対策を紹介します。
対策の実施には時間と労力が必要となりますが、長期的な視点で人材育成に取り組みましょう。
対策1.多様な働き方の推進
施工管理の人手不足を解決するための施策として、下記のような多様な働き方の推進が挙げられます。
- フレックスタイム制
- リモート業務の導入
特に現場での工程管理や書類作成業務をリモート化することで、従業員の働き方の柔軟性を高めることが可能です。
フレックスタイム制やリモート業務の導入は、離職率の低下や残業時間の減少にも貢献していることがわかっています。
参考:リモート勤務など柔軟な働き方の制度の実践で、離職率の向上や応募数が増加する企業も ――内閣府男女共同参画局「仕事と生活の調和推進のための調査研究」報告書
なお建設業の働き方改革について、国土交通省が提示する施策や取り組んでいる企業の事例を下記で紹介していますので、特にイメージが湧きにくい方はぜひご覧ください。
建設業の働き方改革に迫る!国交省の5つの施策や成功のコツ・事例を解説
対策2.人材育成とキャリアパス設計の充実
施工管理に携わる人材の育成は、長期的な課題解決に欠かせません。
国土交通省が提唱する「建設産業の現場力強化プログラム」では、若手技術者向けのトレーニングや資格取得支援が推奨されています。
建設技能トレーニングプログラム(建トレ) |
・建設業従事者一人一人の生産性向上が目的 ・多様な技能、技術の取得の機会を提供する建設リカレント教育の一環 |
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建設キャリアアップシステム | 技能者の資格や現場就業履歴等を業界横断的に登録・蓄積し、技能経験に応じた適切な処遇につなげるシステム |
教育訓練センターでの職業訓練 | 富士教育訓練センターでは、建設産業の広域的な職業訓練のための施設を運営し、実務訓練等を実施 |
日建連による資格取得助成制度 | 建設技能・資格を取得して建設業界を目指す若者に対して、資格取得費用を補助する制度 |
国土交通省によると、人的投資時間が多いほど離職率が低い傾向があることがわかっています。紹介した人材育成制度などを参考に、自社にあった制度を取り入れてみてください。
対策3.女性が活躍できる環境の整備
施工管理の人手不足解消には、女性が活躍できる環境づくりも必要です。
国土交通省が発表した「建設業界における女性定着に取り組む企業の実態調査」では、下記のような取り組みが行われていることがわかりました。
出典:令和6年度建設産業における 女性定着促進に関する実態等調査結果 (アンケート調査)|国土交通省
この他に、女性技能者の入職および定着を促進するために、業界全体で取り組むべき課題として、下記の2点も挙げられています。
- 1.妊娠・出産・育児に関する諸制度について、事業者と雇用者がともにわかりやすく学ぶ機会の提供
- 2.女性技能者をはじめ、誰もが使いやすい道具の改良や開発
当サイトでは、建設業界における男女平等を目指す取り組みを解説していますので、関心のある方はチェックしてみてください。
男女差別は実際ある?職場における男女平等、力仕事の考え方とは
対策4.建設業界のイメージアップ
建設業界のイメージを改善するためには、若年層への積極的なPRが必要です。
国土交通省や建設業団体が主導する取り組みとして、下記のようなものがあります。
建設業のリブランディング | ・建設業が「日本の国土・まちをつくる・まもる」重要な役割を果たしていることを、わかりやすいメッセージやスローガンで伝える |
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働きやすい環境の整備 | ・新しいデザインの作業服やユニフォームの導入で、若者や女性が「おしゃれ」「格好いい」と感じる職場環境を整える |
魅力的な情報発信 |
・工事現場や建設業の具体的な魅力を短尺動画やSNSを通じて発信する ・特に若年層にアプローチし、親や学校関係者にも建設業の価値を伝える映像コンテンツを制作してみる |
地域との連携と広報活動 | ・工事現場の仮囲いを活用したデザインや地域の見学会、PR動画の制作を通じて、建設業が地域社会とつながり、頼もしい産業としての認知を高める |
建設業界には「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージから「新3K(給与が良い・休暇が取れる・希望が持てる)」へと変革を進め、次世代を担う人材の確保が求められています。
参考:建設現場で働く人々の 誇り・魅力・やりがい検討委員会提言|国土交通省
対策5.DX推進による業務効率化
施工管理の人手不足解消には、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による業務効率化も外せません。
DXを推進させるツールの一例を下記に挙げました。
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング) | 建物の情報を3次元モデルで管理し、設計・施工・維持管理などのプロセス全体で共有する技術 |
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AI(人工知能) |
・人間の知的能力を模倣し、画像認識・言語理解・ゲームプレイなど、多様なタスクを実行できる ・データを解析してパターンを学習し、パターンをもとに意思決定や予測を行う技術 |
IoT(インターネット・オブ・シングス) | 今までインターネットに接続されていなかった日常のさまざまな物体にセンサーや通信機能を備え、インターネットを通じてデータを収集・交換する技術 |
ドローン技術 | 空機であるドローンを飛行させるために必要な技術の総称 |
ウェアラブルデバイス | 作業者が装着するデバイスを通じて、現場の状況をリアルタイムで記録・共有し、遠隔からの指示や確認を可能にする技術 |
DXの推進をサポートするツールを導入することで、少人数でも現場全体を効率的に管理でき、業務負担の軽減が可能です。
なお株式会社MIYOSHIがレンタルを実施している「G-POKE(ジーポケ)」は、現場で身につけてハンズフリーで撮影したライブ映像を、本社などの離れた場所から遠隔で確認できるウェアラブルカメラです。
SIM内蔵で、ライブ映像通話やデバイス間通話(インカム機能)もついているため、現場の状況をリアルタイムで共有できるだけでなく、作業者同士や本社との即時連携が可能です。
- 【G-POKEの特徴】(一部)
- 月額¥9,800 〜、1ヵ月単位でレンタルが可能
- 重さがわずか165gで、身体に装着した際の負担が少ない
- 三脚などに固定して「定点カメラ」としても使用可能
- スマートフォンでも使い慣れているタッチパネルで、幅広い年代が使いやすい
- 自動で切り替わるナイトビジョン搭載で、夜間の撮影も安心
- バッテリーやWi-Fiなどの付属品は不要で、手軽に導入できる
- 長時間使用もOK
国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」にも登録されている「G-POKE」についての詳しい資料は、下記のボタンをクリックのうえダウンロードしてチェックしてみてください。
施工管理のキャリア展望について
最後に、今後の施工管理のキャリア展望を紹介します。
施工管理のキャリア展望は、下記のような理由から明るい展望の要素もあると予想できます。
インフラ整備の需要 |
・日本のインフラは老朽化が進み、更新やメンテナンスの需要がますます高まっている ・また、災害対策や新たな都市開発なども、施工管理の需要を後押ししている |
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DXの推進 |
・DXの推進により、施工管理の業務は高度化し、新たな可能性が広がっている ・スマートシティや再生可能エネルギー関連のプロジェクトなど、新たな分野での活躍も期待できる |
働き方改革の進展 |
・残業時間の削減や多様な働き方の推進など、働き方改革が進み、建設業界もより働きやすい環境へと変化している ・若い世代や女性など、これまで建設業界に関心の薄かった層の参入が期待できる |
社会貢献性の高い仕事 |
・施工管理は、社会基盤を支える仕事として社会への貢献性が高い ・若年層の価値観と合致し、魅力的な職業として注目される期待が持てる |
自社の強みを活かした戦略を立て、施工管理の更なる発展を目指しましょう。
施工管理の人手不足を解消し未来を支えるアクションを始めよう
施工管理の人手不足は深刻ですが、下記のような対策で人手不足解消に向けた一歩を踏み出してみましょう。
- 多様な働き方の推進
- 人材育成の充実
- 女性の活躍促進
- 建設業界のイメージアップ
- DXツールを使った業務効率化
特にDXツールを活用した業務効率化は、少人数で現場を管理しながら負担を軽減する即効性のある施策の一つです。
株式会社MIYOSHIがレンタルを実施している「G-POKE」は、建設現場の進捗管理に適した小型ボディカメラでDXツールとしてご利用いただけます。
初期費用0円で¥9,800 /月〜1ヵ月単位でレンタルできるため、工期の決まった工事現場やコストを抑えたスモールスタートにも最適です。
付属品も不要でシンプル、わずか165gと軽量で作業者の負担が少なく装着できる「G-POKE」についての資料は、下記をクリックのうえダウンロードしてご確認ください。