共通仮設費とは?内訳や計算方法・類似する費用との違いをわかりやすく解説

共通仮設費は、工事には直接関係ないものの工事をスムーズに進めるために欠かせない費用です。共通仮設費は工事の採算性にも大きく影響するため、内訳を把握し、正しく費用を算出しなければなりません。

本記事では、共通仮設費の基本的な役割や具体的な内訳、正確な計算方法を徹底解説します。「直接仮設費」や「現場管理費」など類似する費用との違いも説明しますので、共通仮設費を理解したい方はぜひ最後まで記事をご覧ください。

共通仮設費とは工事の準備や運営を支えるために必要な費用のこと

共通仮設費は、建設工事において直接的には建物本体の施工に関係しないものの、工事全体を円滑に進めるために必要な間接的な費用です。

例えば、次のようなものが共通仮設費に含まれます。

    【共通仮設費に該当するもの(一例)】

  1. 工事の安全性を高めるための仮囲い
  2. 騒音対策の防音シート
  3. 現場事務所や仮設トイレ
  4. 工事現場の警備を担当する警備員の費用など

仮設管理費は一見地味に思えるかもしれませんが、現場の安全性や効率性を確保し、工事全体の成功に不可欠な要素です。

共通仮設費と直接仮設費・共通費・現場管理費との違い

工事現場に関係する費用には、共通仮設費の他にも次のようなものがあります。

それぞれの費用と共通仮設費の違いを、次項にて説明します。

1.直接仮設費との違いは「直接建物に関係するか」

共通仮設費と直接仮設費には、「直接建物に関係する費用かどうか」の違いがあります。

主な違いは下記のとおりです。

共通仮設費 ・工事全体に関わる間接的な費用を指す

・仮設事務所や仮設トイレ、工事現場全体の防音ネットなどが含まれる

直接仮設費 ・建物の施工や構造に関係する特定の作業や工程に直接必要な費用を指す

・足場・養生・墨出しなどが該当する

 

2.共通費との違いは「費用に含まれる範囲」

共通仮設費と共通費は似ている言葉ですが、ニュアンスが異なります。

それぞれの特徴は、下記のとおりです。

共通仮設費 ・工事現場を円滑に進めるために必要な、一時的な施設や設備にかかる費用のこと
・工事現場に設置する仮設事務所・足場・仮囲いなど、工事そのものを支えるための費用が該当する
共通費 ・工事全体にかかる間接的な費用が該当する

・共通仮設費のほかに、現場での管理費用(現場管理費)や会社の運営費(一般管理費)など、工事全体にかかる間接的な費用がまとめて共通費となる

つまり、共通仮設費は共通費の一部であり、より具体的な工事現場の仮設に関する費用を指します。

3.現場管理費との違いは「対象範囲」

共通仮設費と現場管理費はどちらも工事にかかる間接費用ですが、対象範囲が異なります。

それぞれの特徴をまとめました。

共通仮設費 ・工事全体に必要な仮設物や設備に関する費用が該当する

・仮設事務所・仮設トイレ・安全設備などが含まれる

現場管理費 ・工事の管理や運営に関する人的・事務的な費用が該当する

・現場監督の給与・事務用品費・通信費・交通費などが含まれる

共通仮設費と現場管理費はともに共通費の一部ですが、性質と用途が異なります。

なお、現場管理費についての詳細は下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

現場管理費とは?17の項目や計算方法・設定時のポイントを解説!

共通仮設費の内訳一覧

共通仮設費の内訳を、下記にまとめました。
 

共通仮設費の項目 内容
準備費 ・工事開始前に必要な測量・敷地内の整理・道路の占用など、工事の準備段階にかかる費用が該当する

・工事後に排出される廃棄物の撤去料なども含まれる

仮設建物費 ・工事現場に設置する事務所・資材置き場となる倉庫・作業員の休憩所など、仮設建物にかかる費用が該当する

・これらの建物は工事後に撤去されるため、共通仮設費となる

工事施設費 ・工事現場を囲むための仮囲いや工事車両が通行するための仮設道路、現場内での連絡に使用する通信設備などの費用が該当する
環境安全費 ・工事現場の安全確保のための標識設置や消火設備の設置、周辺への影響を軽減するための養生などにかかる費用が該当する
・騒音や粉塵対策費も環境安全費に含まれる
動力用水光熱費 ・工事現場で使用する電気や水道・ガス代などの光熱費全般が該当する
屋外整理清掃費 ・工事現場の清掃やゴミの処理、工事用資材の整理などにかかる費用が該当する
機械器具費 ・クレーンや重機など、工事で使用する機械や工具のレンタル費用が該当する
その他費用

・材料や製品の品質管理試験に関わる費用など、上記の7項目に含まれない費用が該当する

 
上記のように、共通仮設費は工事の円滑な進行や安全確保のために不可欠な費用であり、直接的な工事費とは別に計上されます。

共通仮設費の2つの計算方法

共通仮設費の主な計算方法は次のとおりです。

  1. 個別の費用を積み上げて計算
  2. 共通仮設費率を用いて一括算定

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

方法1. 個別の費用を積み上げて計算

共通仮設費の8つの主要項目それぞれを個別に算出し、合計することにより共通仮設費を算出できます。

個別に積み上げて計算する方法は、各項目の費用を詳細に把握できる一方で、8項目をすべて計算しなければならず、時間と手間がかかります。また、項目ごとの見積りの正確性が全体に影響するため、慎重に計算しなければなりません。

方法2. 共通仮設費率を用いて一括算定

「共通仮設費率」とは、建設工事の積算において使用される割合のことです。これは工事そのものには直接関係しないものの、工事全体を進めるために不可欠な費用を直接工事費に対して何パーセントにするかを示すものです。

▼共通仮設費用率の計算式

出典:「公共建築工事共通費積算基準」(令和5年改定)における共通費の算定について|国土交通省

共通仮設費率を用いて一括計算する手順は、下記のとおりです。

  1. 1.直接工事費(P)と工期(T)を確認する
  2. 2.工事の種類(新営建築、改修電気設備など)に応じた計算式を選択する
    (※工事の種類については「共通仮設費率の算定方法:7つの工事別ケース」で解説する)
  3. 3.共通仮設費率(Kr)を次の一般式で算出する。Kr = Exp(a + b × Loge P + c × LogeT)
    (※a, b, cは工事種類ごとに定められた係数)
  4. 4.算出した共通仮設費率(Kr)を直接工事費(P)に掛けて共通仮設費を計算する
    共通仮設費 = P × Kr
  5. 5.必要に応じて、共通仮設費率に含まれない項目を別途積み上げて加算する

一括計算は個別項目を細かく積み上げる手間を省けるため、大規模工事や標準的な工事に適しています。

共通仮設費率の算定方法:7つの工事別ケース

本章では、主に公共工事の積算に適用される、国土交通省が定める「公共建築工事共通費積算基準」を使った共通仮設費率の算定方法を紹介します。

紹介する工事は、下記の7つです。

  1. 新営建築工事
  2. 改修建築工事
  3. 新営電気設備工事
  4. 改修電気設備工事
  5. 新営機械設備工事
  6. 改修機械設備工事
  7. 昇降機設備工事

民間工事においては、発注者や工事の特性に応じて積算方法が異なる場合がありますが、国土交通省の基準は一般工事の積算においても参考になる部分が多くあるので、ぜひ参考にしてみてください。

ケース1.新営建築工事

  1. 【新営建築工事とは】
    ゼロから新しく建物を建設すること

新営建築工事の共通仮設費の計算式は、次のとおりです。

【新営建築工事の計算式】

Kr=Exp( 3.346 – 0.282 × loge P + 0.625 × loge T )

Kr:共通仮設費率(%)

P:直接工事費(千円)

T:工期(ヵ月)

※Kr の値は、小数点以下第3位を四捨五入して2位止めとする

【表計算ソフト(Excel)を利用する場合】

Kr=EXP(3.346-0.282*LN(P)+0.625*LN(T))

表計算ソフト(Excel)を利用する場合は、EXP関数およびLN関数を用いることで計算可能

※直接工事費が1,000万円〜50億円の範囲を外れる場合には、共通仮設費を別途定められます。

ケース2.改修建築工事

  1. 【改修建築工事とは】
    既存の建物に対して修繕や機能向上を行う工事のこと

改修建築工事の共通仮設費の計算式は、下表のとおりです。

【改修建築工事の計算式】

Kr=Exp( 3.962 – 0.315 × loge P + 0.531 × loge T )

Kr:共通仮設費率(%)

P:直接工事費(千円)

T:工期(ヵ月)

※Kr の値は、小数点以下第3位を四捨五入して2位止めとする

【表計算ソフト(Excel)を利用する場合】
Kr=EXP(3.962-0.315*LN(P)+0.531*LN(T))

※直接工事費が300万円〜10億円の範囲を外れる場合には、共通仮設費を別途定められます。

ケース3.新営電気設備工事

  1. 【新営電気設備工事とは】
    新築の建物に電気設備を新たに設置する工事のこと

新営電気設備工事の共通仮設費の計算式は、次のとおりです。

【新営電気設備工事の計算式】

Kr=Exp( 3.086 – 0.283 × loge P + 0.673 × loge T )

Kr:共通仮設費率(%)

P:直接工事費(千円)

T:工期(ヵ月)

※Kr の値は、小数点以下第3位を四捨五入して2位止めとする

【表計算ソフト(Excel)を利用する場合】
Kr=EXP(3.086-0.283*LN(P)+0.673*LN(T))

※直接工事費が1,000万円〜10億円の範囲を外れる場合には、共通仮設費を別途定められます。

 

ケース4.改修電気設備工事

  1. 【改修電気設備工事とは】
    既存の建物や施設の電気設備を修繕・更新または機能向上させるための工事のこと

改修電気設備工事の共通仮設費の計算式を、下表にまとめました。

【改修電気設備工事の計算式】

Kr=Exp( 1.751 – 0.119 × loge P + 0.393 × loge T )

Kr:共通仮設費率(%)

P:直接工事費(千円)

T:工期(ヵ月)

※Kr の値は、小数点以下第3位を四捨五入して2位止めとする

【表計算ソフト(Excel)を利用する場合】
Kr=EXP(1.751-0.119*LN(P)+0.393*LN(T))

※直接工事費が300万円〜10億円の範囲を外れる場合には、共通仮設費を別途定められます。

 

ケース5.新営機械設備工事

  1. 【新営機械設備工事とは】
    新たに建設される建物や施設に対して、機械設備を設置するための工事のこと

新営機械設備工事の共通仮設費の計算式は、下記のとおりです。

【新営機械設備工事の計算式】

Kr=Exp( 2.173 – 0.178 × loge P + 0.481 × loge T )

Kr:共通仮設費率(%)

P:直接工事費(千円)

T:工期(ヵ月)

※Kr の値は、小数点以下第3位を四捨五入して2位止めとする

【表計算ソフト(Excel)を利用する場合】
Kr=EXP(2.173-0.178*LN(P)+0.481*LN(T))

※直接工事費が1,000万円〜10億円の範囲を外れる場合には、共通仮設費を別途定められます。

 

ケース6.改修機械設備工事

  1. 【改修機械設備工事とは】
    既存の建物や施設の機械設備を修繕、更新、または機能向上させるための工事のこと

改修機械設備工事の共通仮設費の計算式は、下記のとおりです。

【改修機械設備工事の計算式】
Kr=Exp( 2.478 – 0.173 × loge P + 0.383 × loge T )

Kr:共通仮設費率(%)

P:直接工事費(千円)

T:工期(ヵ月)

※Kr の値は、小数点以下第3位を四捨五入して2位止めとする

【表計算ソフト(Excel)を利用する場合】
Kr=EXP(2.478-0.173*LN(P)+0.383*LN(T))

※直接工事費が300万円〜10億円の範囲を外れる場合には、共通仮設費を別途定められます。

 

ケース7.昇降機設備工事

  1. 【昇降機設備工事とは】
    エレベーターやエスカレーターなどの昇降機を新たに設置・改修・保守するための工事のこと

昇降機設備工事の共通仮設費の計算式は、次のとおりです。

【昇降機設備備工事の計算式】
Kr=Exp( 4.577 – 0.323 × loge P )

Kr:共通仮設費率(%)

P:直接工事費(千円)

※Kr の値は、小数点以下第3位を四捨五入して2位止めとする

【表計算ソフト(Excel)を利用する場合】
Kr=EXP(4.577-0.323*LN(P))

※直接工事費が500万円〜5億円の範囲を外れる場合には、共通仮設費を別途定められます。

【補足】安全管理目的であればウェアラブルカメラも共通仮設費に含まれる

ここで、近年さまざまなシーンに活用されるようになった「ウェアラブルカメラ」にスポットを当ててみましょう。

ウェアラブルカメラとは、作業員がヘルメットや肩に装着して使用する小型カメラのことです。作業の様子や周囲の状況をリアルタイムで記録・配信できるため、安全管理や作業監視、コミュニケーション支援のためのツールとして注目されています。

ウェアラブルカメラは、通常は共通仮設費に含まれません。しかし、安全管理目的で使用する際は共通仮設費に含まれる場合があります。

  1. 【ウェアラブルカメラが共通仮設費に含まれるケース】
  2. ・安全管理目的での使用
  3. 現場の作業員の安全確保を目的として、作業員の動きを記録し、万が一の事故発生時の原因究明や再発防止に役立てる場合、工事全体の安全管理に寄与する目的であれば、共通仮設費に含めるケースが多い
  1. 【ウェアラブルカメラが共通仮設費に含まれないケース】
  2. ・特定の作業員や機械の稼働状況の記録
  3. 特定の作業員のパフォーマンス評価や、特定の機械の稼働状況の記録を目的とする場合は、直接工事費や機械器具費に含めるケースが多い
  4. ・工事の記録や進捗管理
  5. 工事の進捗状況の記録や、完成後の記録の保存を目的とする場合は、工事記録という観点から、「工事記録費」など別の項目に計上されるケースが多い

ウェアラブルカメラが共通仮設費に含まれるかどうかは、具体的な利用目的や契約内容によって判断する必要があります。

 

ウェアラブルカメラを安全管理目的で使用する場合には、株式会社MIYOSHIが提供している小型ボディカメラ「G-POKE」がおすすめです。

▲ポケットに簡単に装着できるG-POKE

安全管理目的の使用に「G-POKE」がおすすめな理由は、下記のとおりです。

  1. 本体にSIMが内蔵されており、現場で撮影した映像をリアルタイムで遠隔から確認できる
  2. 身につけて持ち歩き撮影ができるため、危険な現場に立ち入る人数を最小限に抑えられる
  3. インカム機能が搭載されているので、音声による状況把握も可能
  4. ナイトビジョンモードやLEDライトにより、夜間でも安全管理ができる

「G-POKE」は1週間の無料レンタルも実施しているので、手軽に使用感を試していただけます。G-POKEにご興味がある方は、下記からお気軽にお問い合わせください。

共通仮設費を理解して正しく費用を算出しよう

共通仮設費は建設工事の円滑な進行に不可欠な間接費用で、準備費・仮設建物費・環境安全費などが含まれます。

直接仮設費や現場管理費とは異なり、工事全体に関わる費用が対象です。

計算方法には「個別積み上げ方式」と共通仮設費率を用いた「一括計算方式」があり、後者は工事の種類や規模に応じた算定式を使用します。適切な共通仮設費の見積もりは、工事の採算性や入札の成否に大きく影響するため、正確な理解と計算が必要です。

 

近年工事現場をリアルタイムで確認するために活用されている「ウェアラブルカメラ」は、安全管理目的で使用する場合には共通仮設費として算出可能です。

株式会社MIYOSHIが提供しているウェアラブルカメラ「G-POKE」は、小型でわずか165gの軽量ボディカメラのため、装着時のストレスが少なく、作業者への負担が軽減できます。

G-POKEは1週間の無料レンタルを実施しており、使用感を試してから契約できる点もメリットです。性能・使用感・料金などが気になる方は、ぜひ下記からお気軽にお問い合わせください。