建設業の若者離れは当たり前?理由や4つの対策・新3Kを解説
近年、建設業界における若者離れが深刻化しています。同時に急速な高齢化も課題となっているなか、「限りある人材の有効活用」と「若者の入職促進による将来の担い手の確保」が急務です。
本記事では建設業で若者離れが進む現状や、その背景にある理由と対策・人材確保に取り組む企業の事例などを紹介します。
建設業の若者離れは当たり前?若者を含む建設就業者の現状
国土交通省から2024年9月に発表された「建設労働需給調査結果」によると、全国的に建設業の人手不足が続いていることがわかっています。
特に東北地域では人手不足が顕著で、8月の過不足率は全国で1.2%、東北で4.5%と高い水準です。前月と比較すると、全国・東北ともに不足幅は若干縮小しているものの、依然として人手不足が深刻な状況であることがわかります。
同じく国土交通省が発表している「最近の建設業を巡る状況について」によると、平成9年には455万人だった技能者の数は、令和3年には309万人まで減少しており、およそ24年間で就業者数が大幅に減少していることが示されています。
【建設就業者の現状】
出典:最近の建設業を巡る状況について|国土交通省
この調査では2020年(令和2年)と比較して、55歳以上の建設業就業者は6万人減少した一方で、29歳以下の層は増減が見られず、若年層の確保が急務であることが明示されているのが特徴です。
さらに、建設業に従事する55歳以上の割合は35.5%に達しており、全産業平均の31.2%を上回っています。特に、29歳以下の若年層は12%と少ない状況が見られます(下図参照)。
【年齢階層別の建設技能者数】
出典:最近の建設業を巡る状況について|国土交通省
このように建設業界では世代交代が十分に進んでおらず、技術の継承が課題となっているのが現状です。
建設業の若者離れが当たり前と言われる4つの理由
建設業の若者離れが当たり前といわれる主な理由は、下記の4つです。
若者離れの理由を理解して、対策につなげましょう。
理由1. 労働環境が厳しい
建設現場は屋外で行うことが多く、悪天候下での作業や多様な資材の取り扱いなど、労働環境が厳しく、若者にとって過酷に感じられる点が少なくありません。
例えば、下記のような建設現場特有の労働環境が挙げられます。
肉体労働の比重が高い | 重い資材を運ぶなどの重労働や長時間立ちっぱなしなど、体力的負担が大きい |
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天候に左右される | 屋外での作業が多いため、暑さ・寒さ・雨など、厳しい自然環境の中で働くことが求められる |
危険がともなう作業がある | 高所作業や重機操作など、事故のリスクが高い作業も少なくない |
こうした厳しい労働環境が、若者が他の業種へ流れてしまう一因となっています。
理由2.長時間労働の風潮
建設業では工期に合わせたスケジュールが厳しく、ときには早朝から深夜まで働くこともあります。
また、突発的なトラブルや天候不良で作業が遅れることがあるため、予定以上の長時間労働が求められることも少なくありません。
加えて、他産業では一般的となっている週休2日制も十分に確保されていないケースが多く、建設業に従事している約43%の人が4週4休以下で働いているのが現状です。
【建設業における年間実労働時間の推移と休日日数の現状】
出典:建設現場で働く人々の 誇り・魅力・やりがい検討委員会提言|国土交通省
長時間労働や休日出勤が常態化し、突発的なトラブルへの対応も求められる建設業の過酷な労働環境は、ワークライフバランスを重視する若者にとっては魅力的な選択肢とはいえません。このような労働環境が原因で、建設業では若者の定着率が低下しています。
ちなみに、2024年4月より残業時間の上限規制が建設業にも適用され、違反した企業は罰則の対象となっています。
理由3.「3Kイメージ」の根強さ
建設業界は、長らく「きつい」「汚い」「危険」といった3Kの業種として認識されてきました。3Kの負のイメージは若者の間でも根強く残っており、現代の働き方や価値観と合わないと感じられることが少なくありません。
近年技術の進歩により、建設現場の安全性は向上し、作業効率も大幅に改善されてきました。しかし、業界全体のイメージを変えることは容易ではなく、若者にとって魅力的な職業としてアピールするにはいたっていません。
日経コンストラクションが実施した調査によると、「身近な若者や自分の子どもに、建設業界への就職を勧めるか」という質問に対して、建設業界に従事する回答者の約半数が「勧めたくない」と考えていることが明らかになっています。
理由4.業界の古い慣習と文化
建設業界には古くからの慣習や文化が根強く残っています。
例えば、上下関係の厳しさや年功序列といった構造が顕著であり、若者が自由に意見を述べることが難しいといった状況も考えられます。
またデジタル技術の導入が遅れており、手作業やアナログな作業が中心となっている現場も少なくありません。効率的な働き方が浸透しにくい点が、柔軟で新しい働き方を求める若者にとって、魅力を感じにくい原因の一つとなっています。
建設現場のデジタル技術が進まない原因と対策を、下記の記事で解説しているので併せてチェックしてみてください。
建設業の若者離れを防ぐ3つの方法
次世代の建設業を支える若者を呼び込み、定着させるための3つの効果的な対策を紹介します。
まずは、着手しやすいところから始めてみましょう。
方法1. 労働環境の改善
建設業界では、肉体的負担が大きい・労働時間が長いなどのイメージが若者に敬遠される理由の一つになっているため、労働環境の改善は最優先すべき課題です。
具体的な対策例を下記にまとめました。
長時間労働の是正 | 無理のないスケジュール管理や残業時間の削減により、従業員の負担を軽減する |
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休暇制度の充実 | 週休2日制の導入や有給休暇の取得促進などにより、働きやすい環境を整える |
安全対策の徹底 | 定期的な安全研修や事故防止設備の導入などで現場での安全対策を強化し、安心して働ける環境を提供する |
休憩スペースの確保や冷暖房設備 | 従業員が快適に休憩できる環境を提供し、働く意欲や体調の維持をサポートする |
この他にも、相談窓口の設置やストレスチェックの実施など、心の健康をサポートする取り組みも必要です。「働きやすい職場づくり」が若者の定着率を高める鍵となります。
なお、対策例の一つ「安全対策」について、建設現場で起こりやすい事故とともに下記の記事で解説しているので、併せてご覧ください。
建設現場で起こりやすい事故とは?安全対策の取り組み事例も紹介
方法2.魅力を感じさせる工夫
建設業の若者離れを防ぐには、仕事に魅力を感じさせる工夫も欠かせません。
建設業が社会インフラの基盤を支えていることを強調し、「社会に貢献している」というやりがいや達成感を若者に伝えることが重要です。
また、建設プロジェクトの完了時に得られる「目に見える成果」のアピールや、将来性が感じられる「自己成長やキャリアアップの機会」を提示することで、若者が長期的に働きたいと思える職場づくりを目指しましょう。
加えて、企業内でのキャリアパスを明確にし資格取得のサポートを行うことも、若者にとって魅力的な要素としての効果が期待できます。
方法3.DX導入による効率化
DX(デジタル技術)の導入による業務の効率化も、建設業の魅力を高める重要なポイントです。
例えばドローンやウェアラブルカメラを用いての現場管理や、遠隔操作可能な重機の活用で、作業の効率化を高めることが可能です。
最新の技術によって現場作業の自動化や遠隔管理が進めば、若者にとって「スマートでテクノロジーに精通した業界」という印象を与えることができます。
またデータ活用による業務効率の向上が実現すれば、労働時間の短縮や報酬の向上にもつながる可能性があり、より働きやすい環境が整うという期待も高まります。
なお、建設DXに役立つツールとして株式会社MIYOSHIでは、小型ボディカメラ(ウェアラブルカメラ)「G-POKE(ジーポケ)」のレンタルを実施しています。
初期費用0円でスタートでき、ライブ映像通話やデバイス間通話で現場とのやりとりもスムーズに行えるため、現場管理者や作業員の負担を軽減し、効率的なコミュニケーションも可能です。
さらに現場で撮影したライブ映像を本社などの離れた場所から遠隔で確認できるため、技術継承にも役立ちます。
テクノロジーに興味を持つ若者にとって、建設業の魅力を感じられる要素となり得る「G-POKE」については、下記のボタンから気軽に問い合わせてみてください。
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若者離れ対策につながる企業の取り組み事例3選
前述した3つの方法も取り入れながら、若者離れ対策につながる取り組みを実施している企業の事例を3つ紹介します。
自社の状況と照らし合わせて、参考になる取り組みがありましたらぜひ真似してみてください。
事例1.労働環境の改善|株式会社荒⽊組
株式会社荒⽊組(岡山県)は、⻑時間労働是正の取り組みとして有給休暇の取得促進とスケジュールの⾒える化を実施しています。
【取り組みの概要】
目的 | ・従業員の有給休暇の取得を促進し、長時間労働を是正する ・従業員が適切に休暇を取得できる環境を整備し、リフレッシュを促進する ・メリハリのある働き方を実現し、結果として会社全体の効率向上を目指す |
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背景 | ・建設業界に根強い「きつい・きたない・きけん」という3Kのイメージの中でも、特に「きつい=残業が多く、休みが少ない」状況を改善する必要があった ・将来を担う若年層の入職促進のため、働きやすい環境をアピールすることが重要とされていた ・従来の特別休暇制度だけでは有給取得日数が増えなかったため、さらなる取り組みが求められていた |
取り組み | ・部門ごとに従業員の有給休暇の取得状況を可視化。従業員が5日間以上の休暇を確実に取得できるように管理した ・祝祭日を出勤日にした代わりに、その日数分(年間約15日)を有給休暇として「家族休暇」として付与し、休暇を取得しやすい環境を整えた ・現場従業員のスケジュールを時間ごとに記入する「いきいきWORKボード」を導入。従業員同士のスケジュール共有を可能にすることで、退社予定時間を明確にし、スムーズに退社できる環境を作った 出典:建設業における働き方改革推進のための事例集|国土交通省 |
有給休暇の取得促進やスケジュールの見える化で長時間労働を是正し、休暇取得を支援しています。働きやすくメリハリのある環境づくりが、若者離れ対策に貢献しているポイントです。
- 【成果】
- 従業員の有給休暇の取得日数は2016年度の6.3日から2019年度には15.6日に上昇した
- 従業員は連続した休暇を取得しやすくなり、長期の旅行や趣味に没頭する機会が増えた
- メリハリのある働き方が浸透し、従業員のリフレッシュが促進された
- 有給休暇の年度繰越が増えたことで、突発的な出来事にも対応できる余裕が生まれ生活に対する安心感も向上した
参考:建設業における働き方改革推進のための事例集|国土交通省
事例2.魅力を感じさせる工夫|隂⼭建設株式会社
隂⼭建設株式会社(福島県)は、⽣産性向上の取り組みとして、社で建設情報可視化アプリを開発し、建設現場の状況を場所や時間を問わず共有できる環境を実現しています。
【取り組みの概要】
目的 | ・自社開発の建設情報可視化アプリ「Building MORE(ビルモア)」を活用し、建設現場の情報共有を促進、安全性・効率性を向上させることで、業界全体の底上げを目指す |
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背景 | ・労働力不足が深刻化しており、業界に対する魅力の低さや業務の多さ、やりがいの欠如が挙げられていた ・ICT施工やドローンの導入は一部の変革にとどまっており、全体の効率化とやりがいを生み出すための挑戦がスタートした |
取り組み | ・2018年に自社で「Building MORE(ビルモア)」の開発を開始 ・建設現場の状況をリアルタイムで共有可能にする環境を整備 ・発注者から現場作業員まで幅広く利用できるアプリとして、建設生産プロセスに最適化された機能を搭載 ・ICT施工やドローンを併用し、さらなる効率化を実現 出典:建設業における働き方改革推進のための事例集|国土交通省 |
ICT施工やドローン・独自アプリの導入で業務効率化を図り、働きやすさ・達成感・新しいスキルの習得機会を提供することで、若者に魅力的な職場環境を提供している事例といえます。
- 【成果】
- 工事情報がいつでもどこでも確認できる専用Web環境を提供できるようになった
- 進捗や予定の確認が容易になり、報告や連絡の時間が削減した
- 情報をペーパーレスで一元管理し、生産性が向上した
- 業務効率化が進み、残業時間削減に成功、従業員満足度が向上した
- 令和2年度福島県優良建設工事表彰を受賞し、独自のブランディングを確立できた
参考:建設業における働き方改革推進のための事例集|国土交通省
事例3.DX導入による効率化|⽇建建設株式会社
⽇建建設株式会社は、⽣産性向上の取組として施⼯管理の多機能アプリを活⽤し、多くの業務を効率化させている企業です。また現場に定点カメラを設置することにより、現場の状況をリアルタイムで把握し、移動コストを削減しています。
【取り組みの概要】
目的 | ・施工管理の多機能アプリや定点カメラ・タブレット端末を活用し、業務の効率化と生産性向上を図る ・現場と事務所間の移動時間削減やリアルタイムな状況把握により、迅速な意思決定と安全管理を強化することを目指す |
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背景 | ・工事の写真管理などで、若手現場員への負担が大きく、長時間労働の原因となっていた ・現場と事務所間の移動が多く、業務効率を低下させていた ・協力業者からの問い合わせ対応にも時間がかかり、非効率が発生していた |
取り組み | ・施工管理アプリの導入により、工事写真の自動分類や帳票出力を実現 ・定点カメラを設置し、現場のリアルタイム状況を把握するようにした ・タブレット端末を1人1台貸与し、現場や社外でも図面や資料を閲覧可能にした 出典:建設業における働き方改革推進のための事例集|国土交通省 |
施工管理アプリ・定点カメラ・タブレットを導入し、工事の写真管理や移動コストを削減しています。また、リアルタイムでの状況把握により業務効率化と生産性向上を実現し、若手社員の負担軽減に取り組んでいる事例といえるでしょう。
- 【成果】
- 写真撮影後の自動振り分けにより工事写真の管理作業が大幅に削減され、作業時間の短縮が実現
- 事務所にいながら現場の状況を把握できるため、移動時間が減少し、安全対策も強化された
- タブレットを利用したことで、その場での打ち合わせや作業指示が精度高く行われ、業務効率が向上した
参考:建設業における働き方改革推進のための事例集|国土交通省
なお、DX導入による効率化なら、株式会社MIYOSHIが提供するカンタン監視カメラ「G-cam」もおすすめです。
レンタルカメラの「G-cam」は、初期費用0円・面倒な配線は不要で手軽に導入できることから、建設DXのはじめの一歩にも最適です。コストや技術的ハードルを気にせず、すぐに運用を開始できる点が大きな魅力となっています。
加えて、管理者が移動中でも手元のスマートフォンでリアルタイムで映像をチェックできるため、現場作業員の待機時間が縮小され、長時間労働の要素の削減にも貢献します。
屋外の過酷な建設現場にも対応可能な高い防塵防水機能を備え、赤外線照射も標準装備している「G-cam」についての詳細は、下記から資料をダウンロードしてご覧ください。
若者を惹きつけるための新3Kとは
最後に、若者を惹きつける新3Kを紹介します。建設業界には従来「きつい、汚い、危険」という3Kのイメージがありましたが、近年は働き方改革やデジタル化の進展により、状況が大きく変わりつつあります。
近年注目されている「新3K」は下記のとおりです。
さっそく見ていきましょう。
新3K1.高給与
建設業は、専門的なスキルや経験を積むことで高収入を得られる職種です。
特に若者にとって初任給や昇給の機会がしっかりと確保されているかどうかは、職業選択の大きなポイントとなります。
下記のような切り口でアピールしてみましょう。
- 専門的なスキルや経験を積むことで高収入を得られる
- 努力が報われる環境の提供
- スキルアップに応じた賃金の見直し
- 資格取得による手当の支給
2022年の国土交通省の発表では、官と民が協働して公共調達単価の引き上げや下請けの適正発注を徹底したことにより、2013年から2019年の6年間で年平均2.7%と、全産業平均を大幅に上回る賃上げを実現していることがわかります。
「高収入を得られる業界」というイメージを強化するのがポイントです。
新3K2.(充実した)休暇
繰り返しになりますが、労働時間の長さや休暇の少なさが建設業界のネガティブなイメージの一因となっています。そのため、下記のように充実した休暇制度や柔軟な働き方を整備することが必要です。
- 年間休日の増加
- 有給休暇の取得率向上
- リモートワークの推進
- 短時間勤務の選択肢を用意
プライベートの時間も大切にでき、若者が安心して働ける環境を作り出しましょう。
新3K3.希望のあるキャリア
若者が長く働き続けるためには、明確なキャリアパスが不可欠です。厚生労働省によると、キャリアパスは下記のように説明されています。
- 職員にとってキャリアパスは「将来の道標」であり、現状における自分の経験や資格、スキルなどと3年先、5年先の将来像とを照らし合わせて、“将来この法人でどのような処遇となるかを示す根拠”となります。
建設業界では現場作業だけでなく、設計・マネジメント・技術指導など多様なキャリア展開が可能です。加えてキャリアアップの機会が豊富であり、成長に応じて責任あるポジションへ昇進できることも、建設業界の魅力の一つとしてアピールできます。
若者にとって、「長期的な視点で希望を持てる職業」であることを伝えましょう。若者に「自分の将来が見える職業」と感じてもらえれば、業界全体の魅力向上が期待できます。
労働環境の改善やDX導入で建設業の若者離れを防ごう!
建設業の若者離れを防ぐには、次の3つの方法が有用です。
-
1.労働環境の改善
2.魅力を感じさせる工夫
3.DX導入による効率化
建設業は社会のインフラ基盤を支え、デジタル技術などで労働の負担も軽減されてきていることをアピールし、やりがいや将来性のある職種ということを知らせていきましょう。
なお、株式会社MIYOSHIでは、建設DXに役立つツールとしてカンタン監視カメラ「G-cam」や小型ボディカメラ「G-POKE」のレンタルを実施しています。
どちらのカメラも初期費用0円で、複雑な設定が不要なだけでなく、幅広い年齢層の方が使いやすい設計になっており、現場作業の効率化にも役立ちます。
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