建設業の働き方改革に迫る!国交省の5つの施策や成功のコツ・事例を解説
建設業界では、長時間労働や技術者の高齢化、若者の業界離れによる人材不足などの課題を解決するために、働き方改革が注目されています。
しかし取り組みがなかなか定着せず、効果を上げられないケースも少なくありません。
本記事では、建設業の現状や課題、働き方改革の具体的な施策をお伝えします。取り組みを成功させるコツや成功事例も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
なぜ建設業の働き方改革が重要なのか?建設業の現状と課題
建設業に働き方改革が必要な理由として、次のようなものが挙げられます。
- 長時間労働の常態化
- 高齢化と若者離れによる人材不足
国土交通省が示した産業別の年間出勤日数を見ても、建設業の労働時間の多さは明確です。
黄色の線の建設業は、全産業より年間12日も出勤が多く、製造業と比べると16日も多く出勤していることがわかります(令和3年度)。
また「平均的な休日の取得状況」は下記のとおりで、4週6休が最多で他産業では当たり前の週休2日も取れていないのが現状です。
建設業では高齢化も進んでおり、年齢階層別の建設技能者数を見ても60歳以上の就業者は77.6万人にのぼり、「建設技能者の4人に1人は高齢者」という状態です。
一方で、将来の建設業を支える29歳以下の割合は、全体のわずか12%弱で若手入職者の確保と育成が急務といえます。
このように、休日が少なく労働時間が長い点や次世代の技術継承者が不足していることからも、建設業における働き方改革は重要です。
なぜ建設業は若者離れが進むのか、原因や対策に関心のある方は、下記の記事もチェックしてみてください。
まだまだ続く2024年問題への取り組み
2024年問題とは、日本の建設業や物流業界を中心に、働き方改革関連法に基づく時間外労働時間の上限規制が、2024年4月から適用されたことによって懸念される問題を指します。
時間外労働の上限は、原則として月45時間・年間360時間とされ、ルールを守らずに違反すると罰則(6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。
参考:建設業の時間外労働の上限規制は2024年4月から!|国土交通省
長時間労働の規制で「厳しい工期設定では対応が困難となる」などの課題が、2024年問題の一例です。また労働時間が短くなることによる収入減少で、離職率が高まるなどの懸念も課題の一つです。
2024年問題による影響は、建設業や物流業界が抱える構造的な課題が根強いため、今後も継続して業界全体に影響を及ぼすと考えられます。
国土交通省では、2024年問題を労働時間短縮のチャンスととらえ、持続可能な建設業に向けた働き方改革を推進する施策をまとめています。国土交通省が推進する施策の詳細を次章で解説しますので、読み進めてみてください。
なお建設業の2024年問題に関して、下記の記事で詳しく解説しているので、併せてチェックしてみてください。
建設業における働き方改革へ向けた施策5選
ここからは、国土交通省が打ち出した内容をもとに「建設業における働き方改革へ向けた施策」を解説していきます。国土交通省が打ち出した主な施策は、下記のとおりです。
今後の業界動向を把握することで、先手を打った対応のヒントが得られます。これを機に自社の課題を見直し、より働きやすい環境づくりを推進していきましょう。
施策1.週休2日制の推進
週休2日制は、労働者の健康維持やワークライフバランスの向上に不可欠です。国土交通省が推進する目的と施策をまとめました。
目的 | 長時間労働の是正と建設業の魅力向上を図る |
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具体策 |
・公共工事において「4週8休(週休2日)」を確保するための工期設定を徹底 ・発注者(国や自治体)の働きかけにより、休日確保が困難な中小企業にも波及効果を目指す ・民間工事にも「適正な工期設定ガイドライン」を適用し、全業界での休日確保を推進 |
週休2日制の導入で労働者の満足度を高め、離職率を低下させる効果が期待できます。
施策2.適正な工期設定の徹底
国交省のガイドラインを活用し、計画段階で実現可能な工期を設定することで、現場の負担を軽減できます。
目的 | 無理な工期設定を抑え、労働負荷を軽減する |
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具体策 |
・発注者と受注者間での協議を義務化し、受注者の意見を反映できる仕組みを強化する ・工期短縮が避けられない場合でも、適切な費用負担(人員増加による採用費や残業代)を発注者側に求めるルールを明確化する ・工期変更時の対応ルールを策定し、現場の負担を軽減する |
参考:建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン(第1次改訂)|国土交通省
適正な工期設定は、従業員の健康維持と生産性向上を両立させることが可能です。また、スケジュール通りの納品が実現しやすくなり、取引先との信頼構築にも良い影響を与えます。
施策3.給与・社会保険の改善
建設従事者の給与改善と社会保険加入の徹底により、建設業界全体の処遇基準を向上させ、持続可能な労働環境の構築が期待できます。
目的 | 技能や経験に見合った給与の支給と社会保険加入を標準化し、働きやすい環境を整える |
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具体策 | ・技能者の処遇改善に向け、労務費の総額表示を進め、下請企業にも適正な賃金が反映される仕組みを推進する ・元請企業が下請企業に対し、適切な社会保険加入状況を確認する責任を明確化する ・工期変更時の対応ルールを策定し、現場の負担を軽減する |
参考:建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン(第1次改訂)|国土交通省
社会保険加入率の向上により、技能者の生活の安定を図るとともに、業界全体の信頼性の向上も見込めます。
施策4.キャリアアップの支援
技能者の処遇を改善し、キャリアアップを支援することで、業界全体の人材流出を防ぎます。
目的 | 技能者の待遇向上と技術継承の促進 |
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具体策 |
・技能者の資格や社会保険加入状況、就業履歴を業界横断的に登録する「建設キャリアアップシステム」を活用し、技能者の情報を「見える化」する ・技術者の就業履歴の正確な管理で、経験や能力を客観評価し、処遇改善や適材適所を実現する ・労働契約書における賃金や労働条件の明示を徹底する ・技能実習や資格取得費用の補助を拡充し、キャリアアップを支援する |
賃金水準の見直しや福利厚生の充実は、働きがいを高めるための効果的な方法です。さらに、優秀な人材が継続的に現場に従事することで、生産性の向上にもつながります。
施策5.ICT活用による生産性向上
作業効率の大幅な改善には、ICT(情報通信技術)の導入が欠かせません。
ドローンを活用した現場管理や、建設プロセス全体を可視化するBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)技術は、業務の効率化と精度向上が期待できます。
目的 | 限られた人材で高い生産性を実現する |
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具体策 |
・i-Construction(※1)を活用した施工(ドローンによる測量や自動化機械の導入)を推進する ・BIM/CIM(建築情報モデリング/建設情報モデリング)(※2)を利用し、設計から施工、維持管理まで一貫したデジタル情報の活用を促進する ・ICT導入への補助金制度を整備し、中小企業への支援を強化する |
参考:建設業における働き方改革推進のための事例集|国土交通省
- (※1)i-Constructionとは
- 調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までのすべての建設生産プロセスでICT等を活用する取組みのこと
- (※2)BIM/CIMとは
- 計画、調査、設計段階から3次元モデルを導入することにより、その後の施工、維持管理の各段階においても3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を図る取組みのこと
このほか定点カメラの導入は、遠隔地からでも進捗状況を確認できるため、現場への移動時間を削減する効果も期待できます。
例えば株式会社MIYOSHIが提供するウェアラブルカメラ「G-POKE」は、現場で撮影したライブ映像を本社などの離れた場所から遠隔で確認できるため、遠隔臨場が実現し生産性向上の推進にも役立ちます。
また同じくMIYOSHIが提供するカンタン監視カメラ「G-cam」とともに、国土交通省が推進する新技術の採用促進制度であるNETIS( 新技術情報提供システム)に登録済みです。信頼性のある技術のため公共工事での採用率を上げるアピールポイントにもなり得ます。
「G-POKE」「G-cam」ともにSIM内蔵で大規模な設備も不要なうえ、レンタル形式のため初期費用が無料で低コストで導入が可能です。DXの手始めとしても最適な「G-POKE」「G-cam」についての詳細は、下記のバナーをクリックのうえ資料をダウンロードしてみてください。
働き方改革を成功させる2つのコツ
建設業における働き方改革を成功させるには、長時間労働の是正や生産性向上などの課題解決に向けた具体的なアプローチが必要です。
しかし、実際には多くの企業で取り組みが進んでいないのが現状です。そこで、当サイトがおすすめする働き方改革を成功させる2つのコツをお伝えします。
コツをつかんで実践し、自社の課題を効率的に解消していきましょう。
コツ1.トップの意識改革
働き方改革の成功には、経営層やトップのリーダーシップが欠かせません。
トップが現場の課題を理解し、長時間労働の削減や週休2日制の導入に向けた方針を明確に打ち出すことが重要です。
またトップ自身が改革の重要性を社員に伝え、率先して改善に取り組む姿勢を見せると、全社的な意識改革が促進されます。
例えば、月次の労働時間分析の実施や現場訪問を通じて課題を共有し、現場で働く人々と直接コミュニケーションを取るなどが効果的です。
さらに具体的なイメージを得たい方は、働き方改革の目的や長時間労働の正確な制限値を社員に伝えて改革を進めた企業の事例を、下記からご覧ください。
長時間労働の蔓延を、トップの決断で一掃。 社員の意識改革へ 中外電工株式会社|厚生労働省
コツ2.分野ごとに分けて取り組む
働き方改革を進める際には、すべてを一度に変えようとせず、分野ごとに分けて取り組むと実現の可能性が高まります。
ここでは、国土交通省が公表している「建設業における働き方改革推進のための事例集」になぞって、「建設現場の生産性向上」「経営効率化」「長時間労働是正」の3つの視点からできる取り組みを表にまとめました。
具体的な取り組み例 | 参考になるサイト | |
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建設現場の生産性向上 |
・BIM/CIMを活用し、設計や施工の効率化を図り、ミスや手戻りを減少させる ・ドローンやロボットを活用し、作業効率を向上させて人手不足の解消にも役立てる ・現場作業のデジタル化を推進し、電子帳票やクラウド管理ツールを導入して進捗管理を効率化する |
▼BIM/CIMを理解したい |
経営効率化 |
・経営情報をクラウド化し、経理情報や⼈事情報の共有をスムーズにする ・受発注管理のシステム導⼊による省⼒化を図る ・現場従事が困難になってきた職員には、アグリ事業にて雇⽤を確保する |
▼情報共有のシステム化について ▼アグリ事業の詳細を知りたい |
長時間労働是正 |
・労働時間管理システムを導入し、労働時間の正確な把握と残業時間の削減に努める ・部署ごとに残業時間の削減目標を設定し、定期的に進捗状況を確認する ・年次有給休暇の取得を奨励し、リフレッシュの機会を提供する |
▼システムについて 働きやすい職場環境を作るため、 労働時間の報告をお願いします! ▼長時間労働是正のヒント |
このような取り組みを段階的に進めることで、自社の特性や状況に合った働き方改革を推進し、持続可能な労働環境の実現が期待できます。
下記の記事では、現場視点で建設業のデジタル推進化のステップを解説しているので、働き方改革がなかなか進まない際のヒントとして、ぜひご覧ください。
成功事例に学ぶ建設業界の働き方改革
前述した国土交通省が公表している「建設業における働き方改革推進のための事例集」より、3つの視点から取り組みを紹介します。
事例から自社に適した働き方改革のヒントを見つけ、現場の課題解決や業務効率化につながる実践的なアイデアとなれば幸いです。
事例1.建設現場の生産性向上:カンタン監視カメラ「G-cam」を活用して生産性向上
1つ目の事例は、株式会社MIYOSHIがレンタルを提供している「G-cam」によって安全管理や現場スタッフの業務効率化に取り組んだ株式会社キタムラ建設様の事例です。
キタムラ建設様の取り組みの背景・内容・成果を下表にまとめました。
企業名 | 株式会社キタムラ建設様 |
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取り組みの背景 | ・建設現場では安全確保が最優先。現場監督は悪天候時に資材や足場の安全確認のため、休日返上で現場を見回ることが多かった ・都心の建設現場では事務所と現場が離れており、連絡手段は主に電話だったが、作業員の多忙さから連絡が取りづらく、現場監督は現場と事務所を何度も往復する非効率な状況が生まれていた ・建設現場は施錠が難しく、夜間の侵入や盗難が発生しやすかった |
取り組み内容 | 【カメラ導入の検討と実施】 市販カメラの事例を参考にし、防塵・防水性能を持つ「G-cam04」を選定。ホテル建設現場に2台設置した 【現場状況の可視化】 G-cam04の映像を従業員の会社用スマートフォンへ転送し、遠隔で現場の安全確認や進捗確認を可能にした |
成果 | ・G-cam04の導入により遠隔で現場監視が可能になり、休日出勤が減少した ・事務所から現場の様子が確認でき、業務効率が向上した ・カメラ設置で不審者の侵入を抑止し、万が一の場合は捜査にも活用できる |
G-cam04で撮影した映像を作業員が所持する会社用のスマートフォンに転送することで、現場にいない作業員も状況を把握でき、安全確認や業務効率化に役立っています。
事例2.経営効率化:経営情報のクラウド化を活⽤
2つ目は、経営効率化の一環として、受発注管理システムの導入と経営情報のクラウド化を進めた企業の事例です。
取り組みの背景・内容・成果は下記のとおりです。
企業名 | 伊藤組⼟建株式会社 |
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取り組みの背景 |
・業務の効率化、特に決済処理のスピードアップを図りたかった ・各支店や作業所からのアクセス性を高め、業務効率化と災害対策に役立てたい |
取り組み内容 | 【経営情報のクラウド化】 経理情報や人事情報を含む経営情報のクラウド管理を実施した 【受発注管理システムの導入】 注文請書の承認を電子化し、システム会社のシステムを部分カスタマイズして運用した |
成果 | ・経理情報のクラウド化により、各部門間の情報共有がスムーズになり、業務の連携が強化された ・受発注に関する業務の効率化が進み、決済案提出から決済完了までが電子化により迅速化した ・データを外部データセンターに保管し、災害時のリスクを低減した |
伊藤組土建株式会社の事例からは、経営情報システムの導入が業務効率化だけでなく、企業全体の生産性向上やリスク管理に役立つことがわかります。
参考:建設業における働き方改革推進のための事例集|国土交通省
事例3.長時間労働是正:年間休⽇⾒直しによる⽣産性向上
次は働き方改革の一環として、年間休日の増加や労働時間管理の徹底に取り組んだ事例です。
企業名 | ⼩雀建設株式会社 |
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取り組みの背景 | ・働き方改革や人材確保のために労働条件の改善が急務となった ・労働時間を削減しながらも工期を守り、生産性向上と社員満足度の向上を目指した |
取り組み内容 | 【勤怠管理システムの導入】 現場社員にはスマートフォン、本社勤務社員にはICカードを活用して出退勤を記録 【労働負荷の平準化】 現場を統括する管理者が工事現場ごとに人員配置を見直し、労働負荷の偏りを防止した 【年間休日の見直し】 年間休日を令和3年度→110日、令和4年度→116日、令和5年度→121日と、段階的に増加した |
成果 | ・令和3年度と令和4年度の比較で、一人あたり平均所定外労働時間が1.75時間減少した ・労働時間の削減により、職員の健康状態が改善されたほか、家族との時間の増加が実現した |
⼩雀建設株式会社では働きやすい環境になったことで、「若手社員の定着率向上につながる」と期待されています。
できることから粘り強く働き方改革を進めよう
建設業における働き方改革を進めるには、トップの意識改革が欠かせません。経営層が現場の課題を正しく理解し、長時間労働の削減や週休2日制の導入などの方針をはっきりと打ち出すことで、全社的な意識改革が促されます。
さらに、一度にすべてを変えようとせず「生産性向上」「経営効率化」「長時間労働是正」 など、分野ごとに優先順位をつけた取り組みがおすすめです。各分野の課題に段階的に取り組み、できることから粘り強く働き方改革を進めていきましょう。
株式会社MIYOSHIでは、建設業の働き方改革のツールとして役立つカンタン監視カメラ「G-cam」、小型ボディカメラ「G-POKE」のレンタルを実施しています。
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